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ニューズレター第2号(August 1, 1995)

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これからの日本支部         渡部恵一郎(支部長)

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 このたびIAML国際音楽資料情報協会の日本支部長に選ばれました。IAMLはご承知のように音楽資料に関する国際的な情報機関でありまして、日本支部は日本の情報に関する内外からの窓口であります。IAML (International Association of Music Libraries, Archives and Documentation Centres) の“(Libraries)は、日本語になおすと単純には「図書館」ということになるかもしれませんが、“L”という言葉の本来の意味は「館」ばかりではなく、中味をなす資料そのものでもあります。そういうわけで、この協会のメンバーは基本的には音楽資料に関心を持つ個人であり、したがってメンバーは必ずしも図書館員である必要はありません。ひろく音楽学者や資料情報関係者にも及びます。もちろん図書館員の方々や組織機関としての図書館、また様様な意味で音楽資料に関わりをもつ団体会員各位の御助力を仰がなければならないのですが……。
 さて、日本支部がまず行わなければならないことは、音楽資料に関する国際的なレベルにおける情報を逐一構成員にお伝えすることです。日本支部の会員各位には機関誌である『Fontes Artis Musicae』がお手許にとどいているはずですが、これはいわば形をなした成果でありまして、支部が日常活動としてなし得ることは、よりホットな生きた情報の提供であります。それから、それと同じく大切なことは日本支部が日本の固有の状況を世界に伝えることです。私個人が直接関係したことについて一言いわせていただければ、例の南葵文庫についての問い合わせが私個人に向けてしばしばあるのです。それは個人的なお世話というレベルを越えて支部として状況説明をしなければならないことだと思います。また、日本音楽の資料に関する状況報告はわれわれのもつ最も大きな責務でありましょう。
 最後に、IAMLの関連組織でありますRILM(国際音楽文献目録)、RIdIM(国際音楽図像目録)、それにRISM(国際音楽資料目録)との協調の問題があります。日本においては、それぞれの組織にそれぞれ固有の成立の歴史があり、個別の活動領域があり、IAML日本支部としては少なくとも全体状況をくまなく把握しそれを国際組織に向けて表現する義務があると考えます。
 この組織の本質は情報の総合的・包括的な把握力とその表現力の中にあると考えます。意見の相違や対立があっても(それ自体はよいことです)、それを越える力がなければならないと考えます。私はそれを自らに課して行きたいと思います。 1995年7月25日 ロンドンにて

 

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特別寄稿:ニューズレターの発刊によせて   V.ハインツ

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Dear colleagues,
I have heard that the Japanese Branch is going to issue a branch newsletter, beginning this August. I think this is a very important step forward for your branch. Such a newsletter will serve as a vital link between the members. It will not only be a forum for exchange of information, but also give your members a feeling of identity.
I have with great interest followed the new, positive trend of the Japanese Branch. This newsletter is yet another sign of the vitality of the Branch and reflects the hard work of the newly elected Branch officers. Hopefully it will also help you acquire new members and encourage old ones to take a more active part in the Branch activities.
On behalf of IAML Board, I wish you the best of luck with your Branch Newsletter and future work.

Yours Sincerely
Veslemoey Heintz
President

日本支部会員各位:
 日本支部で、8月から、支部ニューズレターが発刊されるという知らせを受けました。支部活性化のための、重要な一歩であると思います。ニューズレターは、会員相互間の、生きた絆です。それは、情報交換の場となり、さらに“会員であることの実感”を一人一人に与えてくれます。
 私は、最近の日本支部における、新しい、前向きな動向に、目を見張らされてきました。今回のニューズレターの発刊も、支部活性化のひとつの証しでしょう。それはまた、新しく支部役員に選ばれた方々の努力の結晶でもあります。これを機会に、さらに新会員が増え、また、すでに会員となっている皆さんの支部での活動がさらに活性化することを期待しています。
 IAML本部の役員を代表して、支部ニューズレターの成功と今後の発展を祈念いたします。
敬具

V.ハインツ(IAML新会長)

 

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活動現状報告(1):

音楽文献目録委員会(旧称:RILM日本国内委員会)  関根敏子 

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 1992年の設立25周年にあたって、委員会の名称を「RILM日本国内委員会」から現行の「音楽文献目録委員会」に、目録のタイトルも『音楽文献要旨目録』から『音楽文献目録』に改めた。同じ年、委員選出団体として「日本音楽教育学会」が加わったため、現在の委員会は、委員長を含めて5つの団体より選出された15名の委員に事務局長を加えた16名で構成されている(別記参照)。
 委員会の主要業務は、日本国内で公表された音楽関係研究文献を編集し、年1回『音楽文献目録』として発行すると同時に、RILM日本支部として国際版音楽文献目録『RILM Abstracts』に掲載論文を選抜して、ニューヨークの国際本部に送付することにある。
 『音楽文献目録』には、単行本や雑誌ばかりでなく、広く学会誌や各種紀要に掲載された論文等から学位論文まで掲載されている。収録文献数は、第1巻(1973)の 475点から2倍以上に増えており、第22巻(1994)では 1,063点に達している。その間、日本やヨーロッパ以外の地域の音楽や複数の分野にまたがる研究が増加しており、最近では音楽療法、コンピュータと音楽、環境音楽、アート・マネージメントなど、現代の社会とのつながりを示す研究も目立つ。そのため、音楽学者や図書館関係者ばかりか国文学者など多方面の研究者にも利用されるようになってきた。
 委員会の最近の活動としては、1995年に目録第1巻から第20巻までの復刻版(4分冊、発売:第一書房、8万円)とともに、同年7月には20巻までを統括した索引巻(発売:音楽文献目録委員会、8,000円)を発行した。また、音楽図書館協議会編『音楽情報と図書館』(1995)に掲載された「音楽文献目録委員会と音楽文献目録の歩み」(著者:関根敏子)には、委員会の歴史、これまでの全委員と助成団体のリストなども含まれている。

【音楽文献目録委員会(1994−96年)】
 委員長 :福島和夫
 委  員:日本音楽学会:今谷和徳、岡部真一郎、樋口隆一
      東洋音楽学会:加納マリ、草野妙子、福島和夫
      日本音楽教育学会:加藤富美子、澤崎眞彦、八木正一
      音楽図書館協議会:竹内道敬、塚原康子、姫野 翠
      国際音楽資料情報協会:加藤修子、金澤正剛、東川清一
      事務局長:関根敏子
 監  査:渡部恵一郎、岸本宏子
 事務局長:関根敏子

 

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活動現状報告(2):RIdIM-Newsletter購読者グループ  寺本まり子

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 RIdIM-Newsletterはニューヨークの Research Center of Music Iconography of the City University of New York Graduate School によって年2回発行されており、現在は、vol.19-No.1(Spring, 1994)まで送られてきています。
 このニューズレターの内容の中心は、各地の美術館や博物館の資料に描かれた音楽に関する研究や報告で、図像資料は西洋ばかりでなく世界各地の、古代から現代にわたるものが含まれています。また、数年に1度ほど各コレクションの目録(パンフレット)も発行されています。
 このニューズレターは購読料がひじょうに安く(1995年現在、1年US$10.00)、個人で送金すると銀行手数料などの諸経費の方が多くなることから、音楽図像学に関心をもつ者約10名が、10年ほど前から2年分をまとめてニューヨークに送金するようになりました。
 そのころ、このグループは1年に3−4回集まり、音楽図像学に関する内外の文献を購読したり、各自の研究を発表したりしましたが、当初から閉鎖的なグループではなく、音楽研究者(西洋および日本)、美術研究者、演奏家、図書館の方々が自由に語り合う場でした。1988年のIAML東京大会のときには、前記のニューヨークのセンターからの要請で、南蛮絵画に描かれた音楽と雅楽の図像に関して RIdIM-Documentation-Cardを作成して展示しましたが、このことに関しては『Fontes』35/2, 1988, p.128の美山良夫氏のレポートをご参照ください。現在では元来の購読者グループの形にもどっています。
 購読者グループでは、1995年6月5日に、vol.18と vol.19 (1993-94年分)の12名分の購読料をすでにニューヨークに送金しています。したがって、今後購読を希望されるかたは、まず1994年分(vol.19-1/2)の購読料 US$10.00を各自ニューヨークの下記の住所へ直接ご送金いただければ幸です
(送金小切手より International Money Orderのほうが便利です)。そして、1995年分(vol.20)以降に関しては、寺本までご連絡いただければ、一括送金いたします。また、今後会合を再開する場合にも、ご連絡できることと思います。

*ニューヨーク送金先:
       RESEARCH CENTER FOR MUSICAL ICONOGRAPHY(受取人名: RCMI-CUNY)
       City University of New York
       33 West 42nd Street
       New York, NY 10036, U.S.A.
*日本国内連絡先:寺本まり子

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DENMARK CONGRESS: JUNE 18-23, 1995

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■盛会のうちに無事終了
IAMLの第17回コングレスが、6月18−23日、デンマークのヘルセンゲアで行われた。今回の会議には、34カ国から 224名が参加。今年はとくに、インド、タンザニアからも参加者を迎えた。日本支部からは、以下の6名が参加:秋岡 陽、井上公子、上法茂、関根敏子、藤堂雍子、福島和夫。
■本部新役員
コングレス会期中に、本部の新役員の選挙結果が発表された。選挙結果は以下のとおり:
 会長:Veslemoy Heintz
 副会長(4名):Hugh Cobbe, Massimo Gentili-Tedeschi
         Joachim Jaenecke, John Roberts
なお、事務局長には、昨年の会議で選出されたAlison Hallが就任。会計はひきつづきPamela Thompsonが担当する。
■福島和夫氏の発表が好評
会期中の6月22日、日本支部会員の福島和夫氏の論文発表が行われた。論文の題は「日本音楽の文献資料について The Documentary Sources of Japanese Music」。当日の会場における反応については、聴衆のひとりであった Ioannis Zannos氏(ベルリン、SIM)によるレポート(別掲)を参照されたい。なお、福島氏の発表原稿は、今後発行される『Fontes』に掲載の予定。
■インターネットに高い関心
各セッションとも、新技術の利用に高い関心が示された。RISMシリーズA/UのCD-ROM(今秋発売予定)のデモンストレーションも行われた。
■今後の会議の予定
1996年以降の会議の予定が、つぎのように発表された:
 1996年……ペルージャ(9月第1週の予定)
 1997年……ジュネーヴ(時期は検討中)
 1998年……スペイン(開催都市は未定)
 1999年……ノルウェー(ただしニュージーランドに変更の可能性もある)
 2000年……イギリス(開催都市は未定;しかしいずれにせよ、新しい British Libraryの見学は行う)
 2001年……フランス(IAMLの50周年を記念して、IAML発祥の土地であるフランスで開催する。開催都市等詳細は未定)
 2002年……サンフランシスコ(ただしオーストラリアも開催地として立候補しており、なお未定)

 

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福島教授の発表を聞いて

   Ioannis Zannos

   (Staatliches Institut fuer Musikforschung, Berlin)

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At the session on resources in research libraries for music lying outside the West
European tradition of the 1995 IAML congress, Professor Kazuo Fukushima from Ueno Gakuen College, Tokyo, presented a paper on Sources for Japanese Music. The paper deserves special notice, because it is only rarely that a specialist speaks to a international audience of music scholars on the theme of written sources of Japanese music. Taking into account the general ignorance about this theme, the speaker had prepared a presentation describing not only technical details, but also the general cultural background of the written tradition of Japanese music. He explained the social role of music practice in he main periods of Japanese history. He underlined the importance of musical education and writing in the everyday life of the higher classes. This provided an remarkable perspective for appreciating the importance of written documents in Japanese music. Within this setting, the quality and value of extant sources was all the more appreciated. The examples cited showed the richness and variety of traditions and the high level of scholarship and craftsmanship they represent. The good timing and clarity of the presentation heightened the impact of the paper. In the subsequent discussion a question was raised, whether the publication of a catalogue was being planned within the series of RISM. Certainly Prof. Fukushima's paper illuminated little known but fascinating corners of Japanese music as a representative of traditions outside the West European tradition. It is to be hoped that the high interest shown by the audience is a sign of change, and that such traditions will gradually take their fitting place alongside the West European. The paper showed what precious gain is to be expected from a more global awareness and coordinated research on musical sources in the international community.

 上野学園大学の福島和夫教授は、IAML1995年度国際学会の非ヨーロッパ圏の古典音楽関連資料を所蔵する専門図書館に関するセッションで日本の古典音楽資料について論文発表をおこなった。専門家による日本の古典音楽資料に関する報告を聞く機会はきわめて限られており、この発表は外国人研究者にとってまことに貴重な体験であった。外国人研究者の多くは残念ながら日本音楽一般に造詣が深いとはいえない。福島教授はこの点を考慮し、文献学の技術的な詳細、問題についてのべる前にまず、日本における音楽資料の文化的背景一般について説明し、各時代の音楽の社会的役割を概観したのち、日本の知識階級に属する人々の生活のなかで、音楽教育と音楽に関する記録を残すことがいかに重要とされていたかを強調した。この前半の説明によって、日本古典音楽において資料がどのような価値をもつのかを理解することができたとともに、今日残された資料の質の高さを確信することができた。発表後半で紹介された資料はいずれも日本古典音楽の豊かさと多様さを伝え、資料成立当時の学問と工芸技術の水準の高さを示している。また適切な時間配分、論旨の明快さという点でも、この発表はきわだったものであった。発表後のディスカッションで、RISMによる日本古典音楽資料のカタログの刊行が計画されているかとの質問があった。福島教授はヨーロッパ圏以外の伝統文化を代表するもののひとつとして、西洋にまだよく知られていない、たいへん興味深い日本音楽の一分野の存在を明らかにした。こうした優れた伝統は西洋文化と同等に評価され研究されるべきであり、聴き手がこの発表に寄せた関心の高さが、西洋人の文化認識の転換の兆しであることに期待したい。福島教授の発表は、音楽文献研究の国際的な場で、グローバルな認識と研究交流が深まることによって、いかに大きな成果を獲得することができるかという可能性を私たちに示してくれた。(英文・日本文とも、筆者による)

*Ioannis Zannos氏は、1996年1月に来日予定。IAML日本支部では、Zannos氏を囲んで、ベルリンの Staatliches Institut fuer Musikforschung における活動について、うかがう会を計画中です。ご期待ください。


 

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会員異動

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(1)住所変更
 加藤修子、石田康博
(2)新会員(1995年7月7日現在)
 伊東辰彦、鈴木大地、西原 稔
(3)逝去
 大宮眞琴(前会員)

 

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事務局より

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■デンマークへUS$500送金
1995年度日本支部総会議題となっていた「IAML年次総会(デンマーク)への東欧諸国メンバー参加費援助」について、役員会で送金金額を検討し、最終的にUS$500を送った。
■IMC新体制
国際音楽評議会(IMC)日本国内委員会が1995年4月から新体制で活動を行っている。現在、会長=海老沢敏、書記長=徳丸吉彦、事務局長=勝村仁子、事務局=国立音楽大学学園長室気付。なお、IAMLからは、渡部恵一郎支部長が、代表理事としてIMC理事会に出席する。
■お詫びと訂正
先日おとどけした「1995年度総会議事録」の出席者の欄に、鹿島享氏(当日出席)のお名前がぬけていました。お詫びして訂正いたします。
■新会員をご紹介ください
お知合いの方で、IAMLの活動に興味のある方がいましたら、同封の「入会のご案内」をお渡しください。
■ご意見・ご希望をお聞かせください
新しい体制のもと、今後の日本支部の活動についてご意見・ご希望などございましたら、事務局あてお知らせください。皆様の貴重なご意見をお待ちしております。

 

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PUBLICATIONS RECEIVED

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*Boletin de la Asociacion Espanola de Documentacion Musical, Ano 1, no.1, Enero-Junio 1994.(IAMLスペイン支部より)
*Boletin de la Asociacion Espanola de Documentacion Musical, Ano 1, no.1, Julio-Diciembre 1994. (IAMLスペイン支部より)
*Israel Music Institute News, 1994/3-4. (Israel Music Information Centreより)
*Israel Music Institute News, 1995/1. (Israel Music Information Centreより)
 

(以上)